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【ニュートンから】楽器のサイエンス(1)

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楽器のサイエンス

 人類は有史以前から楽器を使って音楽をかなでてきた。みつかっている最古の楽器は,2008年9月にドイツのガイセンクレステルレ洞窟で発見された約4万3000年前のマンモスの牙製の笛だ。この笛には管の途中に複数の穴が開けられている。楽器には太鼓などの膜鳴楽器や木琴のような体鳴楽器などさまざまな種類があるが,この記事では主に弦楽器と管楽器について解説する。

 音楽は感動をあたえてくれる芸術だが,楽器の音が鳴る原理は物理法則に支えられている。楽器が出す音には,高さ(音高)と大きさ,音色という三つの要素がある。音高は,ギターやバイオリンなどの弦楽器では弦の重さや長さ,張力によって決まり,笛などの管楽器では主に管の長さによって決まる。多くの楽器では発生したままの音は小さいため,「共鳴」という現象によって増幅される。楽器に固有の音色は,主に「倍音」という音の成分の組み合わせによって決まる。

弦楽器の音高は 弦の長さで決まる

 そもそも音とは,空気を媒質とする「疎密波」のことだ。物体が振動すると,周囲の気体の分子が圧縮されたりひきはなされたりして,気圧が高い部分と低い部分が周期的に生じる。この空気の粗密が周囲に伝わって音として私たちの耳に届く。物体の単位時間あたりの振動回数は「振動数(周波数)」とよばれ,1秒間あたりの振動数は「ヘルツ」という単位であらわされる。振動数が小さい音は低く,振動数が大きい音は高く聞こえる。人が感じ取ることができる音域はおよそ20~2万ヘルツだ。

 それでは楽器はどのようにし…

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